日本医療研究開発機構 先進的医療機器・システム等開発プロジェクト
「超低侵襲リアルタイムアダプティブ(RA)放射線治療の実現」
(2019年7月-2024年3月)

高齢化が加速する国内では、がん患者は増加を続けています。診断技術・治療技術の高度化により早期発見、早期治療による一日も早い社会への復帰を実現することが、患者さん本人の負担のみならず社会的・経済的な損失を最小限にするものとして期待されています。放射線治療は、形態と機能を温存できる治療法として、外科手術と比較しても患者への負担を抑えることが可能であり、社会復帰へのハードルを低くできる治療法です。特に一般的な外科手術と比較すると高齢者への適合性は高く、この10 年の間に飛躍的な進歩を遂げてきました。根治を目指しながら副作用を少なくすることも可能となっており、陽子線治療に代表される粒子線治療も健康保険に採用されるほど、がん治療の有力かつ標準的な治療選択肢となってきています。近年の陽子線治療や重粒子線治療への注目度は高く、陽子線治療施設は装置のコンパクト化が進み、民間病院での導入も加速し施設数は着実に増えてきています。また、呼吸性移動を伴う体幹部腫瘍に対しても、従来のX線治療と同様に、腫瘍近傍に留置した体内金属マーカをX線透視でリアルタイムモニタリングしながら照射を行うゲーティング照射(待ち伏せ照射)が実現されてきました。
ここで、粒子線治療特有の課題として、呼吸による移動がもたらす腫瘍位置変動や、体内外を含めた患者固有の状態変化が、粒子線の飛程変動に影響を及ぼし治療の不確実さの原因となることが挙げられます。超低侵襲治療として患者の負担をさらに低減し、より確実な治療を行えるようにするためには、治療中の腫瘍位置を体内マーカなしにリアルタイムで正確に把握し、かつ粒子線の飛程も考慮した照射制御技術が求められています。また、粒子線治療は治療期間中の腫瘍や周辺臓器の変化により線量分布が大きく変化する可能性がありますが、現在の治療ワークフローでは生じ得る線量変化を把握し、治療計画修正の必要性を患者位置決めのプロセスの中で判断することが困難です。迅速な治療ワークフローを実現するためには、治療計画の修正が必要であるかどうかを治療直前までに即時判断できる方法が不可欠です。
本プロジェクトでは、これらの課題を解決するために、超低侵襲リアルタイムアダプティブ放射線治療システムを開発します。北海道大学は、日立製作所、筑波大学、京都大学と共同で、主に粒子線の飛程も考慮したマーカーレスボリュームゲーティング技術の開発、および、迅速な治療ワークフローを実現するための即日がん治療システムの開発を担当し、超低侵襲化による患者の身体的負担の軽減、および陽子線治療成績の向上を目指します。

日本医療研究開発機構 低侵襲がん診療装置研究開発プロジェクト
「微粒子腫瘍マーカとリアルタイム3次元透視を融合した次世代高精度粒子線治療技術の開発」
(2015年9月-2019年3月)

現在、放射線治療の主流はX線治療ですが、陽子線治療装置が急速に小型化・コストダウンし、今後の放射線治療の中心になろうとしています。とりわけ、スポットスキャニング照射法の進歩により、IMPT(Intensity Modulated Particle Therapy)などの新しい治療技術が発展するのは間違いなく、今後、生体内の動きに対する精密性の要求はさらに高まると考えられています。このような背景の中、北海道大学大学院医学研究科白土博樹教授を研究代表者とし、大阪大学、日立製作所を共同提案機関として「微粒子腫瘍マーカとリアルタイム3次元透視を融合した次世代高精度粒子線治療技術の開発」が採択されました。本研究プロジェクトの目的は、空間的・時間的により正確な照射を実現する次世代の4次元粒子線治療法を開発することです。この目的のため、体内への留置における侵襲性が極めて低い新規体内マーカの開発、そのマーカを高精度に検出し体内画像を可視化する技術の開発、2軸のX線透視を利用した新しい4次元コーンビームCT(CBCT)システムの開発、4次元の線量分布を検証する新たな治療計画システムの開発、などのサブテーマ研究を進め、最終的にこれら技術を融合することで、従来よりも高い精度で動きに対応した治療を実現できることを示しました。これにより、呼吸などで体内で動く微小癌から、治療中に縮小し変形する巨大癌まで、高い自由度でその時々の腫瘍形状に合わせ、周辺の正常組織への放射線の影響を極小化し、患者の身体への負担を圧倒的に軽減できる、低侵襲がん治療が実現できると期待されます。
当研究室では、この研究プロジェクトにおいていくつかのサブテーマ研究を北海道大学病院陽子線治療センターや放射線治療科、医学物理部と連携して推進してきました。今後も、この医工連携の基盤のもとで、次世代の放射線治療を支える新しい技術の研究開発を進めていきます。
miyamoto

日本医療研究開発機構 橋渡し研究戦略的推進プログラム
「動体追跡技術を発展させ、がん標的の3次元的形状と位置の時間的変化を把握する実体適合陽子線治療(Real-world Adaptive Proton Beam Therapy)システムの非臨床POC取得」
(2018年4月-2021年3月)

日本医療研究開発機構 未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業
「量子線手術(クオンタム・ビーム・サージェリー)と放射線照射後手術における治療術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」
(2017年4月-2021年3月)

2017年に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)において、日本が強みとするロボット技術・ICT等を応用した日本初の革新的医療機器・システムの開発に関する国家的プロジェクトが開始されました。「量子線手術(クオンタム・ビーム・サージェリー)と放射線照射後手術における治療術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」は、北海道大学と(株)日立製作所が協働し、放射線治療において患者が治療室で治療を受けている間の医師の判断を支援するシステムを開発するプロジェクトです。
これまでに北海道大学大学院医学研究科と工学研究院とが共同で開発してきた「分子追跡放射線治療装置」の経験を発展させ、これまで医師の経験や直感といった暗黙知による治療を、定量化・可視化することで、医師の治療中の判断を支援することを目指します。
本プロジェクトでは医学的な知見とともに、加速器などの大型装置の制御技術、量子ビームの照射制御技術が必須であり、量子ビーム応用医工学研究室は医学研究科放射線科学分野と連携しながら、次世代の放射線治療を支える装置・システム開発を進めています。

内閣府 最先端研究開発支援プログラム
「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」
(2010年3月~2014年3月)

2010年3月、内閣府に設置されている総合科学技術会議において、大型国家プロジェクトである「最先端研究開発支援プログラム(以下最先端プログラム)」の「中心研究者及び研究課題」が最終的に決定されました。このプログラムは、全国から565件の応募があった中から日本の科学技術の将来を担う30件を決定したもので、北海道大学大学院医学研究科白土博樹教授を中心研究者とし、京都大学大学院医学研究科平岡真寛教授を共同提案者とした「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」が採択されました。最先端放射線治療を目的とする本プロジェクトは、最新の加速器技術、量子ビーム制御技術を駆使した大型の装置開発を伴うため、工学研究院量子ビーム応用医工学研究室の梅垣菊男教授がプロジェクトマネージャーと医学物理部門のとりまとめを担い、医工連携、産学連携で進めています。北海道大学(以下北大)は㈱日立製作所と共同で「分子追跡陽子線治療装置」を開発し、京都大学は三菱重工業㈱と共同で「分子追尾X線治療装置」を開発して、連携して次世代の放射線治療システムの構築を進めました。放射線医療分野としては唯一の採択であり、今後の日本の放射線医療・がん治療技術の発展に貢献できるように、関係者が一丸となって開発を進めました。「分子追跡陽子線治療装置」を設置した「北海道大学病院陽子線治療センター」は北海道初の粒子線がん治療施設として2014年3月に治療を開始し、プロジェクトは成功裡に終了しました。
量子ビーム応用医工学研究室は、この「分子追跡陽子線治療装置」の開発にかかわる研究テーマを医学研究科放射線医学部門、北海道大学病院分子追跡放射線医療寄附研究部門他と連携して推進し、次世代の放射線治療を支える加速器技術、量子ビーム制御技術の更なる研究開発を進めていきます。

  • 最先端研究開発支援プログラム
  • 最先端研究開発支援プログラム
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文部科学省 先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム
「未来創薬・医療イノベーション拠点形成」
(2006年7月~2016年3月)

2006年から始まった我が国の第三期科学技術基本計画において、イノベーションを生み出すシステムの強化がひとつのテーマとして挙げられ、先端融合領域イノベーション創出拠点形成の国家的事業が開始されました。「未来創薬・医療イノベーション拠点形成」事業は、この方針を受けて採択された、北海道大学と我が国が誇るリーディングカンパニーとの協働で次世代の医薬・医療の革新的技術開発を行うという産学官連携プロジェクトです。塩野義製薬㈱、 ㈱日立製作所、住友ベークライト㈱、日本メジフィジックス㈱、三菱重工業㈱と協働し、患者のQOLを優先した未来創薬・医療拠点を作ること、次世代分子イメージングシステムを開発し、発症前診断、機能遺伝子・再生治療、分子標的・追跡治療などの先端医療に応用して、患者にやさしい非侵襲的医療の研究開発を推進することを目指しています。
量子ビーム応用医工学研究室は、この「未来創薬・医療イノベーション拠点形成」の次世代分子イメージングシステム開発にかかわる研究テーマを医学研究科核医学分野、分子イメージング講座と連携して推進し、次世代の疾患診断を支える半導体PET、SPECT装置の研究開発を進めています。

未来創薬・医療イノベーション拠点形成