生物学的効果を考慮した陽子線線量分布解析

陽子線治療の効果は物理線量だけで決まるものではなく、ミクロなスケールでの電離密度、細胞の回復能力、細胞の種類など様々な要素が絡んで決まっていきます。しかし、現在は殆ど物理線量のみを考慮した治療が行われており、腫瘍と危険臓器が接する場合や、時間の長くかかる治療が行われた場合、正しい評価が行われない可能性があります。
本研究室では、医学研究院や獣医学研究院と共同でがん細胞への照射実験を行い、物理線量のみではなく、ミクロなスケールでの電離密度を表す指標や細胞の回復能力を同時に含めた生物物理モデルの構築を行っています1,2) 。このモデルを精密化させることで、治療効果を高精度に予測し、より効果が高く副作用の少ない陽子線治療が実現すると期待されます。
1) S. Hirayama, T. Matsuura, H. Ueda, Y. Fujii, T. Fujii, S. Takao, N. Miyamoto, S. Shimizu, R. Fujimoto, K. Umegaki, and H. Shirato, An Analytical Dose-Averaged LET-Calculation Algorithm Considering the Off-Axis LET Enhancement by Secondary Protons for Spot-Scanning Proton Therapy. Med. Phys. 45 (7) 3404-3416 (2018).
2) K. Ueno, T. Matsuura, S. Hirayama, S. Takao, H. Ueda, Y. Matsuo, T. Yoshimura, K. Umegaki, Physical and biological impacts of collimator-scattered protons in spot-scanning proton therapy. J. Appl. Clin. Med. Phys. 20. 10.1002/acm2.12653 (2019).

図3

生物線量分布のシミュレーション

図4

細胞照射実験の様子